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アトリエぱおとはBlog

イラスト:リンゴ

イラスト:絵具と人物

サマースクール 2021.08.16

「憧れの油絵に挑戦」 

美術といえば「油絵」と思う方も多いのではないでしょうか?
レオナルド・ダ・ヴィンチもゴッホもピカソもルノワールも、
美術や歴史の教科書に載っているような有名な作品はほとんどが油絵です。
そんな憧れの「油絵」を夏休みに体験してもらおう、というのがこのプログラム「憧れの油絵に挑戦」です。

 

 

油絵は絵の具を上に上に積み重ねていくのが特徴で、まさに絵を構築するように進めます。
それは石やレンガを積み上げて壁を作る西洋建築にも重なります。
油絵は極めて長時間画面に向き合って制作するため、
いやでも自分と向き合うこととなり、結果として作品は哲学的になります。
西洋美術を語る上で哲学は不可欠な要素であるのはそのためかもしれません。

 

アクリル絵の具や水彩絵の具との大きな違いは、絵の具がすぐには乾かないことです。
アクリル絵の具や水彩絵の具なら数分から数十分もあれば十分乾きますが、
油絵の具は乾くまでに数時間から数日かかります。
ですから計画的に進めないと、乾いていないところに塗ってしまい、色が濁ってしまうことになります。
計画的に進めることがまだ苦手な子どもたちが制作する上での難点はここです。
そのため、アトリエぱおの油絵は小学3年生以上と年齢制限を設けています。
また、絵の具の乾燥時間を設けるために、前編、後編に分けて全2回で開講しています。

さて制作ですが、油絵は500年の歴史のあるたいへん懐の深い世界です。
描きすすめ方は無数にありますが、今回のサマースクールでは、比較的オーソドックスな描きかたで進めました。

まず、揮発性油で絵の具を薄めて、単色でデッサンのように描いていきます。
この時に何色を選ぶかで作品における基調色が決まります。
油絵は色を塗り重ねていく絵なので、最終的にはこの色は他の色の下に隠れてしまいますが、
この色が下地となって上の色にも影響を与えます。

この後、下地の上に具体的なモチーフの色を塗り重ねていきます。

 

また、絵の具の厚みもだんだん増していき、
油絵特有のねっとりとした画面に変わっていきます。
完成に向かうにつれて画面の油分を増やしていくのがポイントです。
これによって画面は堅牢性を増していきます。

ここでうまく下地の色を生かしながら塗ることがポイントです。

 


下地で明暗のバランスはすでにつけてあるので、1色塗っただけでも立体感が出てきます。
ここで、分厚く塗ったり、薄く塗ったり、かすらせたり、削ったりなど、筆遣いのバリエーションを増やしていくことで、画面はより表情豊かになっていきます。

 

 

このあたりまでくると、1筆入れるごとに完成度が上がってくるのがわかります。
あとは、果物のヘタや、瓶のラベルなどの細部を描くことでリアリティを出していきます。

 

 

 

油絵の具はとても扱いにくい画材ですが、じっくりと腰を据えて時間をかけて制作すると、その醍醐味がわかってきます。
そして500年以上続く歴史の厚みの一端を感じることができると思います。

 


先人たちはなぜこんな扱いにくい画材をずっと使い続けてきたんだろう?
その答えがほんの少しだけわかった夏だったのではないでしょうか?

これから迎える芸術の秋。ぜひまた油絵を描いてみましょうね。

 

担当講師 浅原裕貴