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芸大美大受験科 2023.07.12
藝大美大受験科 油絵実習
受験科では、2回に分けて油絵実習を実施しました。
本実習では絵の具の白と黒のモノクローム=明度のみでの画面構築を研究します。
これはバルール(valeur:色価)の研究が目的です。
自らの置こうとする色がそこにふさわしいか(バルールが合うかどうか)を決める最も大きな要因が色彩における明度です。
油絵実習の2回目では、前回制作した画面を土台に細かな描写を入れ全体の完成度を上げていきます。
制作に対するに作者の姿勢はそのまま作品の表情に顕れますが、みな真摯にモチーフを捉えようとしていました。
そうした意欲は大学受験に限らず生涯アーティストを続ける上で大切にしていきましょう。
中には初めて油絵に取り組んだ生徒もいました。
いつも使う鉛筆やアクリル絵の具とは違い、直ぐには乾かないのが油絵の具。
また鉛筆での空間演出のためのぼかしは指で擦れば良いのですが、油絵はそうはいきません。
多毛の筆を使用して丁寧にぼかす必要があります。
また使用後も鉛筆のように「ケースに入れて終わり」ではありません。
油汚れを落とし、クリーナーで洗い、最後に仕上げ洗いをする。
これら大きな違いに戸惑いもあったでしょうが、こうした丁寧な工程も油絵の魅力の一つだと感じてくれると幸いです。
以下、ベテランの油彩画家の佐々木講師のコメントです。
「今回は色彩の要素の内、彩度と色相を省いて、明度のみを問題にして制作しました。
バルールという言葉をみんな覚えたと思いますが、具象的な色彩表現に於いてはこのバルールが非常に重要です。バルールに於いて、色彩の要素のなかで明度が最も重要なウエイトを持ちます。
今回の実習で、明度に問題を絞ることによってバルールの問題が少し整理されたのではないかと思います。
普段より描きやすく、明快な画面が得られたとすれば、バルールの問題が整理されたことから来ると思われます。
また普段の色彩表現に戻った時に、この経験を思い出してみて下さい。
色彩がその場所にふさわしいかどうか、一つ一つ判断を重ねて行くことで、明快な表現が生まれます。
パレット上でしっかりと絵の具を作り、構造的で明快な画面づくりをしましょう。
今回の体験が効果となって現れることを期待します。」
受験科講師 川﨑