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ピアノクラス 2014.11.22

ピアノレッスン日記 連弾の巻 その3

来る1月のピアノクラス発表会で演奏する連弾曲のおはなし、連続シリーズ。
これまでラフマニノフ作曲ピアノ協奏曲2番と、シューベルト作曲「ます」をとりあげましたが、今日のお題はJ.S.バッハ作曲(として長く親しまれている)メヌエット ト長調。

この曲は最近の研究によって、作曲したのはバッハではなくクリスティアン・ペツォールトだということがほぼ定説となっています。
200年以上の長い間バッハの作と伝えられていたのに、いまさら違っていましたと言われてもなぁ、という思いですが。。
ペツォールトって誰? 興味のある方は調べてみてください。

さて。
このとっても有名な曲を、私の大好きな作曲家・春畑セロリさんがとても楽しい連弾曲に変身させています。

まず、セロリ先生のやったことは、
ト長調の曲なのにハ長調に移調。

先生曰く
  「えっ? ト長調じゃないのっっ? このメヌエットはト長調じゃなきゃダメじゃないのぉ」と、お思いでしょうけれど、まぁまぁ、カタいこと言いっこナシ。

そして、この連弾曲は、原曲のモチーフを使って新しい曲を生み出している 私はそう思います。
上のパートはメロディ、下のパートは伴奏、なんてよくありがちな編曲ではなく、二人が対話して一つの曲を紡ぎあげていく、そんなとても素敵な曲。
弾いていてとても楽しい。

セロリ先生がどうしてハ長調に移調しちゃったのか。その理由を、私なりに考えてみました。
移調は、ピアノなどの鍵盤楽器の場合はシャープ♯やフラット♭が多くて弾きにくい調を弾きやすくするときに使う手段の一つです。
移調することによって原調の趣が損なわれることがあり、安易に移調することを私は好みません。
たとえばドビュッシーの「月の光」(変ニ長調:♭が5つもある)をハ長調(♭も♯もなし)に移調しちゃったら、ちょっと待ってくださいよ、といいたくなります。

この曲の原調はト長調。♯が一つで、とりたてて弾きにくいわけではない。なのにどうして?
弾いてみるとわかるのですが、ト長調はちょっとかしこまった雰囲気。
「ほらほら、ちゃんと背筋伸ばして、指の力を抜いて。
もっとていねいに、歌うように」なんて、レッスンされている気分。

でもハ長調で編曲されたこの曲は、あっけらかんとした楽しさと明るさがあるのです。
小さな生徒さんが、「わたし弾けるんだ。楽しいよ、すごいでしょう!」
と喜んでいるみたい。

セロリ先生はこの明るさを狙ったんじゃないかなと。
先生、違っていたらごめんね。

この連弾曲を練習するときは、原曲も練習することをおすすめします。私の生徒もそうしています。
ふたつを弾き比べることで、原曲の良さとともに、それを生かした編曲の醍醐味を味わうことができます。

春畑セロリ編 「バッハ 連弾パーティ」 音楽之友社 所収

ピアノクラス 溝尻雅子