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やすこ先生の、子育てのヒントプチクラスキッズクラス・ジュニアクラス 2024.02.02

絵本『おおきくなりすぎたくま』

絵本『おおきくなりすぎたくま』

リンド・ワード 文・画

渡辺茂男 訳 ほるぷ出版

 

とっても久しぶりにこの絵本に出会いました。

そしてまた絵本のもつ醍醐味を味わうことができました。

その気持ちをあなたにもお伝えしようと思います。

 

これは銃が身近にあったアメリカ開拓時代のお話です。

ジョニーという男の子は、

よその家には仕留めた熊の毛皮が飾ってあるのに、

自分の家には無いことが不満で、それならば、

自分で熊を仕留めてやろうと考え、

森へ一人で出かけます。

 

おだやかな話ではないですよね、こどもが銃を持って、

熊を仕留めにいくなんて。

でも、森で出会ったのはとってもかわいいこぐま。

無邪気で愛らしいこぐまを家に連れて帰ります。

家族もこぐまを可愛がって家においてくれました。

 

でも、こぐまはあっという間に大きくなって、

その家はもちろん、近所の家の食べ物まで食い散らかし

その村を荒らしていきます。

周囲の大人たちから注意をうけ、ジョニーは覚悟を決め、

くまを遠くにつれていき、ここでお別れだと告げて

急いで家に帰りますが、すぐにくまは戻ってくるのです。

小さなボートにくまを乗せて、遠くにつれていっても

やっぱり戻ってきちゃう。

その表情はとっても愛嬌いっぱいで

読み手の私もしょうがないなあ、とその可愛さに

困ってしまいます。

でもやはり、大きくなりすぎたくまと人間は

村で一緒に暮らすことはできません。

どうすればいいのでしょうか...

結末は悲しいものではないのでご安心くださいね。

 

お話の始まりでは、

ジョニーは近所の家に飾ってあった熊の毛皮を見ても

それが命あるものだったということに、

まだ気付いてはいなかったと思います。

でも実際に森で出会ったこぐまはいのちそのもの。

自分と同じ生きているものだったのです。

 

偶然出会った可愛いこぐまのいのちを

大切にしたいという気持ちは大切ですが、

大きくなりすぎて手に負えないほどになってしまうと、

それは恐怖に形を変えていきます。

でもそれらは人間からの視点でしかなく、

くまは自然に大きくなったのです。

それがありのままのいのちだと教えてくれています。

 

作者のリンド・ワードはグラフィックアートの版画家。

一枚ずつ丁寧に絵を作り、文章を添えています。

絵を見ていくだけでお話が分かるように、

魅力のつまった描き方を読者は堪能できます。

決して派手ではない色使いですし、

手に取ると分厚く感じますが、絵を追いかけて、

ページをめくっていくといっきに読み終わります。

小学校の絵本の読み聞かせの会で読みましたが、

こどもたちがお話に吸い込まれて、

一喜一憂しながら楽しんでくれた場面が思い出され、

私にとってかけがえのない時間になりました。

こどもと一緒に絵本を味わえる時間はほんの一瞬です。

その瞬間があなたの宝物になりますように。

 

畠山 泰子