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アトリエぱおとはBlog

イラスト:リンゴ

イラスト:絵具と人物

やすこ先生の、子育てのヒントプチクラスキッズクラス・ジュニアクラス 2021.03.01

絵本「はろるど と むらさきのくれよん」

 

ハロルドは クレヨンひとつで 好きな場所へ行きます。

読んでいるあなたも こどもも ハロルドに心を合わせ、

お話の終わりには きっと満足して眠りにつけるでしょう。

眠る前に ぴったりのお話です。

 

表紙をみれば もうお分かりですよね。

白い紙にむらさきのクレヨンで描くだけで、

行きたい所から 帰る場所まで ハロルドは旅をします。

始めは 自由にクレヨンでかきなぐっていましたが

ふと 月夜の散歩が したくなったので

まず月を、そして道を描き、ひとりででかけいくのです。

そして迷子になっては困ると思い 目印にリンゴの木と、

それをまもるドラゴンも描きますが、そのドラゴンの

あまりの恐ろしさに 手は左右にふるえてしまうので、

にぎったままのクレヨンは なみなみを描いていき、

それは海となって ハロルドは沈んでしまいます。

でも じぶんで ボートを描いて助かるのですよ!

 

この絵本の最初の数ページにもあるように、

こどもははじめ、にぎりしめた クレヨンで、

ただ思いのまま、線を縦に 横に、斜めにと引いて

ぞんぶんに「描く」ということを

楽しむ時期を過ごしますね。

その時期を十分に過ごせると、やがて 

描きたいものがどんどんと浮かんで、

思うように 紙面いっぱいに描けるようになり、

自分の世界を表現できるようになります。

 

ハロルドは 自分だけの想像の世界で 道を描き

楽しくてちょっとスリルのある 旅をして、

どうやったら 自分の部屋に戻れるかを考えます。

むらさきのクレヨンは 彼の意志であり、未来なのです。

こども時代に たくさんの絵本と出会い

お話の中で主人公と一緒に 冒険したり、悩んだり

喜んだりして 疑似体験を積むことは、現実の世界で

やがて「ひとりだち」するための 大切な素養として、

欠かすことは できないと思います。

 

アトリエぱおの子ども達も

こころのままに手を動かし、描きたいものを

くたくたになるまで描いて成長していってほしい。

そう、改めて思わせてくれる私の大切な絵本です。

 

畠山 泰子

 

「はろるど と むらさきのくれよん」

クロケット ジョンソン 作 岸田衿子 訳

文化出版局