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やすこ先生の、子育てのヒント 2023.03.07
絵本『ドームがたり』
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これは原爆ドームが自分のことを語っているお話です。
「原爆ドーム」
いまではすっかりその呼び名が定着していますが、
1915年に『広島県物産陳列館』として誕生しています。
物産陳列館というと、デパートの物産展のような賑わいを想像しますが、
当時も多くの市民でにぎわっていたようです。
明治生まれの私の祖母は女学生の頃(大正時代)に
自分の書いた習字が入選し、そこに展示してもらったと、
かつて懐かしそうに語ってくれました。
晴れがましい気持ちでそれを家族で見に行ったそうです。
市民の憩いの場所でもあった物産陳列館は、
あのときを境に運命が変わってしまったのです。
たとえば いま、私たちが戦争に巻き込まれたら、
あなたや家族が休日に出かけるのが楽しみな場所、
その大好きな場所が爆撃を受けた施設となって
のちの人々に語られるようになってしまったとしたら、
それはどんなにか悲しくて、つらいことでしょう。
想像したくないことですが、
ドームこそ、その悲しい建物になってしまったのです。
アトリエぱおでは 春にスケッチツアーを開催します。
原爆ドームでのスケッチも毎回行われています。
家族でドームを囲んで語らいながらスケッチします。
そのとき、あなたや私はドームのことを
どのようにこども達に語って聞かせるのでしょうか。
私たちなりの言葉で
ドームのことを語れるようになれるといいな。
この絵本はそう気づかされる一冊です。
こどもの成長に合わせて理解や受け止め方が
深くなっていくでしょう。なんどでも折に触れ、
手に取ってみてください。
畠山 泰子
「ドームがたり」アーサー・ビナード 作
スズキコージ 絵
玉川大学出版部 刊