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イラスト:リンゴ

イラスト:絵具と人物

やすこ先生の、子育てのヒントプチクラスキッズクラス・ジュニアクラス 2024.08.18

~孫悟空が暑さを退治するおはなし~ 絵本の紹介

この夏の暑さは本当に厳しいものですね。
まるでこの表紙絵のように燃えているようです。

決定版大型絵本 西遊記 三 火焔山をこえて
唐亜明 文  干大武 絵  偕成社 刊


ここは火焔山、火の海のように熱い山のうえで、
孫悟空が、おおきなうちわを構えていますね。
足元にまで迫ってくる炎に向かって、
今、あおぎだそうとしています。

 

この絵本は西遊記の第3巻です。
それまでに、孫悟空は三蔵法師、猪八戒、
沙悟浄と共に、長い旅をしてきました。
そして、とうとう火焔山(かえんざん)を越えれば、
目的地、天竺にたどり着ける所までやって来ました。
どうにかして、この火の海を鎮めなければ進めません。
孫悟空は三蔵法師から、
牛魔王婦人の羅刹女(らせつにょ)が持つうちわ、
「芭蕉扇(ばしょうせん)」を借りてあおげば、
この火を鎮めることができる、と聞きました。
さっそく、おなじみの筋斗雲に乗って、

羅刹女が住む場所を目指し、
またたくまに山々を昇って行きます。
しかし羅刹女が大切にしている芭蕉扇を、
そう簡単に貸してくれるはずがありません。
互いの術を使ってやり合いますが孫悟空も苦戦します。
ようやく手に入れたと思ったら、なんとニセモノ!
さて、孫悟空はどんな方法で羅刹女から
本物の芭蕉扇を奪うことができるでしょうか。

 

「西遊記」は今から500年ほど昔、
中国が明という時代に書かれたといわれるお話ですが、
私は日本の漫画やアニメでしか見てこなかったので、
この、中国の作家が描く絵本を読んで驚きました。
これまでの想像を大きく変えてくれる、
美しい色彩あふれる作品になっています。
中国の山水画に描かれるような険しい山々の間を
きれいな筋斗雲にのって自由に飛び回る孫悟空。
身体を小さくしてジャスミン茶の泡に身を隠し、
羅刹女のお腹の中に潜り込む描写も素晴らしいです。

 

物語のなかで感じられる燃えるような暑さ、
今の時代も私たちを悩ませ、苦しませています。
でも、あついあつい、と嘆いていないで、
孫悟空が芭蕉扇であおいでくれないかな、
どんな風が吹くのかな。
ふと想像するだけでも、現実の厳しさから、
ちょっと気持ちがやわらぎますね。

 

絵本西遊記、第1巻は石から生まれた孫悟空が、

天界で大暴れするお話。
第2巻は三蔵法師に助けて貰った悟空が、
ゆくてをさえぎる魔物、金閣銀閣と戦うお話です。
どの巻から読んでも面白く、絵を眺めているだけでも
楽しめる絵本です。夏休みの後半にぜひどうぞ。

 

畠山 泰子